「家では大声を出せないから、ボイトレは無理かも……」そんな風に感じていませんか?
今回は、ボイストレーニング専門校・ベリーメリーミュージックスクール名古屋校チーフ兼ボイストレーナーのaoi(アオイ)が、大きな声を出さなくても自宅で着実に歌唱力を高めるための練習法をご紹介します。
小さな声だからこそ鍛えられるポイントや、身体作りまでしっかり解説。周囲の目が気になる方、自宅練習を充実させたい方は必見です!
自宅でもできるボーカルトレーニングとは?
自宅で上手くなりたい歌を練習する場合には、まず「大声を出さずにできること」よりも、シンプルに基本的な練習方法から取り入れてみるのが近道です↓↓↓
🎤リップロール(唇を震わせながら音階練習)
🎤発音のトレーニング(子音の立て方、母音の分離など)
🎤ブレスコントロール(吸う・吐くのコントロール練習)
🎤軽いストレッチや顔まわりのウォームアップ
こういったメニューは、音量を必要とせず基本の土台を整えるのに最適です。
……とはいえ、やっぱり「実際に歌いたい」気持ちもありますよね。「でも、大きな声が出せないと練習できないよね?」と思っている方も多いはず。
そこで次に紹介するのが、“小さな声でもできる実践的なボイトレ”です。このあとは以下のようなセクションに分けて、具体的な内容をご紹介していきます↓↓↓
✅小さな声でもできる練習のコツ
✅クレッシェンドとウィスパーボイスの精度を上げる方法
✅ボイトレに効く!自宅での体づくり
✅声を出さなくてもできる「歌唱の設計図作り」
それぞれ、今日からすぐに取り入れられる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
裏声は使わずサビを避けて練習
小声で練習する際には、以下の2つのルールを設定してください↓↓↓
- 裏声を使わない(元々裏声で歌うパートはOK)
- 地声で声量が上がるサビなどは避ける
AメロやBメロなど静かなパートにフォーカスした練習になります。
この方法を推奨する理由は、声を張れる環境下だと「高音域やパワー重視の歌い方」に偏ってしまいがちだからです。結果的に、低音域や優しい発声の扱いが雑になったり、意識しないまま“なんとなく”歌ってしまっているケースも多く見受けられます。
静かな声で丁寧に歌うことで、「ここは力まなくても地声でいけるな」といった発見が増えてきますし、普段見落としがちな発声の繊細なコントロールにも目を向けやすくなります。
また、強弱の波をつけた歌唱ができるようになると、歌の抑揚や感情表現も豊かになるなど、小さな地声を扱うチャンネルが増えるほど、歌の表現力は確実に広がっていきます。
それでも声のボリュームが気になる場合は、声が反響しにくい環境を選ぶこともポイント。
たとえば、壁に向かって歌うのではなく、カーテンや洋服がかかったクローゼット、あるいはタオルをぶら下げたスペースなどに向かって発声すると、音の跳ね返り(共鳴)を吸収してくれるため、響きすぎず、落ち着いた音で発声することができます。
これは音響的に「吸音効果」と呼ばれ、余分な響きが減ることで、よりクリアな自分の声の出し方に集中しやすくなります。また、声が壁などに反射して無駄に広がるのを防ぐことで、実際の音量よりも“響いてしまう印象”を抑えることができるため、音漏れの不安を軽減しやすくなります。
「小さな声での表現力」の精密度を上げる
大きな声が出せない環境こそ、「クレッシェンド」や「ウィスパーボイス」といった「小さな声での表現力」を徹底的に磨ける絶好のタイミングです。
こうした“静かな声での表現”は、音楽的なニュアンスをつけるうえで非常に重要な要素。実際のライブやレコーディングでも、小さな声のコントロール次第で感情の伝わり方がまるで変わってきます。
クレッシェンドの練習法
まずは クレッシェンド。これは音量を少しずつ大きくしていくテクニックで、シンプルながら表現の幅を大きく広げてくれます。ただし、いざやってみると多くの生徒さんが苦戦します。
「弱から強」へと自然に変化させるのは意外と難しく、“中から強”や“強からさらに強”になってしまうケースも少なくありません。
その原因は、「弱く発声する経験が少ないこと」なんです。
クレッシェンドのスタートは“いかに弱く出せるか”がポイント。静かな環境で声を張れない今こそ、最も小さな発声でスタートする練習を積み重ねてみてください。
練習方法としておすすめなのが以下です↓↓↓
🎤 「あー」の母音で息を吐きながら、最小音量から始めて徐々に声を乗せていく
🎤 音程は変えず、音量の変化だけに集中する
🎤 できるだけ長くゆっくりクレッシェンドさせる(5〜10秒かけるイメージ)
🎤 声に雑音(喉声・ノイズ)が混じらないように、リラックスを保つ
この練習では、息の流れと声帯のバランスが整っていないとスムーズに音量が上がりません。つまり、ボイトレの基礎がそのまま出る項目でもあるんです。
習得することで、歌のフレーズ終わりにさりげないボリュームの波を加えるなど、細かな表現が可能になります。
ウィスパーボイスの練習法
次にウィスパーボイス(息を多く含んだささやき声のような発声)。これは“強いウィスパー”というものが存在しない以上、弱発声のコントロールが鍵を握ります。
つまり、クレッシェンドの“スタートの声”がうまく出せるようになれば、ウィスパーボイスにも自然と対応できるようになっていくのです。
以下のポイントを意識して練習してみてください↓↓↓
🎤 口を大きく開けすぎず、息を「前に押し出す」ように声を出す
🎤 喉を絞めず、リラックスした息で声帯を軽く震わせる
🎤 音程がブレないよう、ピッチ感は正確にキープ
🎤 フレーズの前半だけに使う、語尾を抜くように使うなど、使い所を明確にする
特に多い失敗は「全部をウィスパーボイスで歌ってしまう」こと。「ささやき声」はあくまで“スパイス”です。使いすぎると単調になったり、表現がぼやけてしまう原因になります。
逆に、1フレーズの中で「普通の声→ウィスパーボイス」と使い分けられるようになると、グッと説得力が増します。
「この1語だけウィスパーにしよう」など、ピンポイントで練習してみると効果的ですよ。
ボイトレに効く!自宅での体づくり
ボイストレーニングにおいて“身体作り”は、声の支えを生み出すための土台となります。
特におすすめなのが「背筋運動」。「腹筋」や「足上げ」などももちろん良いのですが、歌唱に必要な「腹圧」や「お腹の支え」に近い感覚を養えるのが背筋です。
背筋運動中も腹筋をしっかり使うことになります。その時に感じるお腹の突っ張り感は、歌唱中に使う腹圧に非常に近いんです。
私自身、これまで一番取り組んできた筋トレが「背筋」でした。
💪 自重でできる背筋トレ
うつ伏せになって両手と両脚を同時に上げる「スーパーマン」
手を後頭部に添えて、上体だけ起こす「バックエクステンション」
💪 簡単な器具を使ったトレーニング
チューブを引くラットプル系の運動↓↓↓
ダンベルやペットボトルを使ったロウイング(引く動作)↓↓↓
20回くらいを1セットとして、1日1〜2セット、ほどの背筋運動を毎日の習慣にするだけでも、発声の土台がぐっと安定してきます。
ぜひ今日から始めてみてください。
声を出さなくてもできる「歌唱の設計図作り」
声を出せない日でも、歌の練習は可能です。それが「歌詞カードに歌唱の設計図を描く」方法。
以下を書き込みながら、歌詞に込める感情や構成を視覚的に整理していきましょう↓↓↓
📝 ブレスの位置
📝 フレーズのまとまり方
📝 強調したい言葉
📝 フレーズの山や谷のイメージ
📝 ウィスパーにしたい部分
実際に口ずさんでいなくても、イメージトレーニングとして非常に効果的です。
例えば、歌詞を見ながら頭の中で歌い方をシミュレーションするだけでも十分な練習になります。「ここで盛り上がる」「この言葉を優しく伝えたい」など、感情の起伏を明確にイメージしておくことで、実際に声を出すときの完成度が格段に変わってきます。
加えて、身振り手振りを使ったり、口元の動きや表情を意識しながら歌ってみるのも非常に効果的です。これは「非言語的表現(ノンバーバルコミュニケーション)」のひとつで、声だけでなく全身で表現する力を育ててくれます。表情筋や滑舌の強化にもつながるので、実際のパフォーマンスにも活かしやすくなります。
さらに、録音した音源を聴きながらこの設計図と照らし合わせて分析すれば、課題の発見や改善ポイントの確認にもつながります。
まとめ:静かな練習でも、声はちゃんと育ちます
「大きな声を出せないからボイトレできない」と思っていた方にこそ、今回ご紹介した内容はぜひ試してほしいものばかりです。
小さな声の中にこそ、繊細なテクニックや表現力を磨くチャンスが隠れています。
地声のニュアンスを丁寧に整えたり、クレッシェンドやウィスパーボイスでの感情表現に磨きをかけたり、さらには表情や身振りを意識することで、声を出さなくても“歌唱の設計図”をつくることが可能です。
もちろん、大きな声での発声はボイストレーニングにとって欠かせない要素ですが、日常の中でできる静かな練習も立派なトレーニング。むしろ、環境が限られているからこそ、集中力と感性が磨かれていきます。
ちなみに、ベリーメリーミュージックスクールでは、いくら声を張り上げても大丈夫な防音ブースをご用意しています!ですが、今回ご紹介したような「静かなボイトレ」も、ご希望があれば丁寧に指導させていただきます。
興味を持っていただけた方は、ぜひ一度、ベリーメリーミュージックスクールの体験レッスンへお越しください!
この記事を書いた人

大学在学中、大阪を中心として音楽活動開始。YAMAHA MUSICQUESTをはじめ、数多くのコンテストに合格。大阪でのインディーズCDリリースやバンド活動を経て2002年ACE OF HEARTS よりソロシンガーソングライターaoiとしてデビュー。