
ボイトレのレッスンでは、同じ課題に取り組んでいても、生徒さんによってその受け取り方や理解の仕方はさまざまです。
理屈や順序を確認しながら理解するのが得意な方もいれば、感覚やイメージを大切にしながら身体で覚えていく方もいます。
そこで今回は、これまで多くの方のレッスンを担当してきた経験から、あえて「理系脳」と「文系脳」という分け方をして、それぞれの傾向について考えてみたいと思います。
自分はどちらのタイプに近いのか?
そんなことも考えながら読んでみると、ボイトレでの「理解の仕方」や「歌が上手くなるための取り組み方」が、少し見えてくるかもしれません。
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理系脳と文系脳について

高校受験などをきっかけに、進路を考える際には、「文系」なのか「理系」なのかということを意識する機会が増えてきます。
将来目指す職業なども含めて、その辺りの時期になんとなく自分の方向性が分かってくる方も多いでしょう。
これまでたくさんの方のレッスンを担当させていただきましたが、その中で感じるのは、特性として考え方や理解の方法がなんとなく以下のように分かれることがあるということです↓↓↓
理系脳の方
- コンバージョン(成果)や統計データを参照する
- 物事を論理的に順序立てて考える
- 内容を細かく細分化しながら理解する
- 理屈や仕組みを確認してからプラクティスに臨む
文系脳の方
- 気持ちや場の雰囲気を感じ取る
- 答えをひとつに限定しない
- 直感的に物事を把握する
- 行間を読むように大まかに物事を把握しながら落とし込んでいく
もちろん、これは絶対的なものではありません。
歌の表現という意味では、文系的な考え方のほうが漠然と良いものになりそうな気がしますし、身体の使い方をマスターするには理系脳のほうが手っ取り早いのかな?などと思ったりもします。
ただ、これはあくまで僕の20年のレッスン歴の中で感じてきた、ひとつの仮説です。
ご自身が理系か文系か分からない方もいらっしゃると思いますし、文系の方でも、その後の経験によって体系的な受け止め方ができるようになる方もたくさんいらっしゃいます。
もちろん、歌唱することを前提に、どちらかが優れているという話でもありません。
あくまで、レッスンをする側から見たひとつの傾向として、参考にしていただければと思います。
理系脳と文系脳、それぞれのレッスン

一般的に「理系脳」の方は、コンバージョン(成果)や統計データを参照しつつ、論理的に順序立てて細かく細分化しながら理解していく傾向があります。
たとえば…
- なぜそのメニューが必要なのか?
- その発声トレーニングで何が得られるのか?
- 高い声を出すにはどうすれば良いのか?
- ビブラートの仕組みはどうなっているのか?
など、成果に向けての合理的な作業の道筋を理解していきます。
なので、僕が理系の方だと感じていたり、明らかに理系の方には、事前にこの辺りの説明をしてからプラクティスに臨んでもらいます。
そして、上手く成果が出た場合は、改めて説明を加えて、実感(成果)と理論を抱き合わせていきます。
上手くいかなかった場合は…
- なぜできなかったのか?
- どうすれば次に達成できるのか?
…を説明しながら、最低でも達成感が得られる、ある程度のところまでは繰り返します。
一方、「文系脳」の方は、その時の気持ちや気分、場の雰囲気を優先して、まずは「当たって砕けろ」的に体験していく傾向があります。
答えをひとつに限定せず、直感的に大まかに物事を把握しながら落とし込んでいく文系脳の方は、コンバージョン(成果)が自分の目的と違っていても、副産物的な現象や成果にも目を向けます。
そのため、多岐にわたって追加の説明を加えることになります。
もちろん、本来の目的を忘れるわけではありません。
上手くいかなかった場合でも、目的とは違う成果が出たことを無邪気に喜んで、楽しんでくれることがあります。
達成感が偶発的に生まれる可能性もあるということです。
受け止め方(インプット)と掃き出し方(アウトプット)

理系脳と文系脳の区別に似ているものとして、右脳と左脳の使い方の違いがあります。
ここでいう右脳・左脳は、医学的・科学的に人を二分するという意味ではなく、あくまで僕自身がレッスンの中で感じている「理解や表現の仕方の違い」として捉えてください。
レッスンでは、たとえば次のような違いを感じることがあります。
インプット
- 人の話や指示を「感覚的」に理解し受け止める。
- 人の話や指示を「論理的」に理解し受け止める。
アウトプット
- 人に対して「感覚的」に説明する。
- 人に対して「論理的」に説明する。
レッスンの中で、伝えるのが苦手な人(アウトプット)や、理解するのが早く的確な人(インプット)など、話しているとそれぞれのタイプが分かってきます。
理系でなくても、論理的に受け止める合理的な方もいれば、雰囲気で捉えていく感覚派の方もいます。
論理的に受け止めて論理的に整理して話す人は、文系であっても理系的な教え方が合うことがあります。
逆に、感覚的に理解して感覚的に表現する人は、ある意味天然で、もしかしたら「歌向きのド天才」かもしれません。
少し難しいかもしれませんが、僕の解釈では「理解力と表現力」は、理系・文系に関わらず、いろいろな組み合わせの方がいらっしゃいます。
その程度もまちまちです。
だからこそ、生徒さん一人ひとりがまったく違う。
リアクションや歌声も含めて本当にさまざまで、講師をしていても飽きません。面白いです。
理系向け・文系向けのレッスンメニュー

同じプラクティスをやっていても、理系・文系で得意不得意があるように見えます。
たとえば、小難しい滑舌トレーニングは、最初の条件付けが上手な理系の方が得意です。
「ワニまみまみまみまー」
…という音階練習があるとします。
この場合…
「1つ目に『ワニ』が出てきて、あとは全部『まみ』だな」
…と、しっかり条件付けできることが鍵になります。
理系の方はほぼ100点。一方、文系の方はワニが何匹も出てきます(笑)。
逆に、「感情を込めて、このフレーズを歌ってみて!」とお願いすると、毎回違う表現になるのが文系の方に多かったりします。
また、ボイトレの課題でもある「マルチタスク」についても、大まかには理系の方、文系の方で分けて教えることがあります。
マルチタスクとは、一度にたくさんのタスクをこなす作業のこと。
ボイストレーニングには欠かせないもので、高音にアプローチするなど、難易度が高いプラクティスでの身体の使い方は、かなり本格的なマルチタスクだと思います。
高音にアプローチする際に、同時に発生する動きは大まかには以下のようになります↓↓↓
- 口を開ける
- 表情筋を上げる
- 舌根を下げる(広げる)
- 喉仏を上げる
- 息のスピードを上げる
これを理系の方には、富士登山を例にとって、あらかじめ理屈を伝えてからプラクティスに臨んでもらいます。
富士山の麓、4箇所(例えば東西南北)から、それぞれ担当者が山登りを始めるイメージです↓↓↓
東)息のスピード担当
西)口を開ける担当
南)舌根を下げる担当
北)表情筋を上げる担当
東南)喉仏を上げる担当
この5人が同時に山登りを始めて、同時に頂上にたどり着くようにしたい。
ただし、息だけは他の3人よりも少しだけ早く到着するイメージで、すべての動作をピークに向かって「せーの!」でやってみてください、と伝えます。
「せーの!」でひとつの動作としてまとめることで、マルチタスク感を減らせているのか、ほとんどの方が混乱も少なく、コツをつかみます。
では、文系の方にはどうするのか。
この説明をしないことが多いです。
手を抜いているわけではありません。
逆に、細かく説明することで混乱してしまうことが多いからです。
そんな方には…
「高い音に向かって膝を折ってみて」
「一番高い音に届いたら、また膝を伸ばしてみてね」
「息は後頭部から宇宙に届くように吐いてみて」
「口はあくびをするように開いてね」
などと、イメージしやすい動作をお願いします。
結果的に、息のスピードを上げたり、高い音に向かって喉仏を後ろ側に引っ張り上げるような動きにつながります。
これを僕は「騙し」と言っています。
騙されようが何しようが、成功した体験(実感)さえ分かれば良いのですから。
最後に
ここまで理系脳、文系脳と分けて、色々と解説してきましたが、どちらが歌が上手いとか下手とかの話とは、まったく関係がありません。
これは、教える側の認識であり、より効果的に成長していただくための心構え的なものです。
同じボイトレの課題でも、理解の仕方や受け止め方は人によって違います。だからこそ、講師側も生徒さん一人ひとりの反応を見ながら、その人に合った伝え方やアプローチを考えていく必要があります。
これは、ひとつのレッスンのノウハウからの見解です。ボイトレ講師にはそれぞれにさまざまなスタイルがあり、どれも経験の上に成り立っているので、ある意味すべてが正解なのだと思います。
僕は講師養成コースにて、実際に講師になった生徒さんを担当しましたので、自分の弟子を育てるように教えてきました。もちろん弟子は、僕のノウハウに加えて、実践の中で感じ取ったものと経験を混ぜ合わせ、自分なりの教え方を体系的に構築していきます。
お医者様と同じで、たくさんのクランケ(生徒さん)を担当することで、講師も一緒に成長していきます。僕に師匠はいませんが、「生徒さんが師匠」だと思っています。先生も生徒も、一緒に同じ課題に向き合って壁を乗り越えていく。この共同作業は楽しく、癖になります。
ぜひ皆さんもご興味があれば、ボイトレの門を叩いてみてくださいね。
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八王子校、横浜校チーフ
本田’POM’孝信

































